夫が性交渉を拒否した事例(慰謝料120万円)
要旨
妻との性交渉を拒否しポルノビデオを見ながら自慰行為に耽るなどの夫の行為が婚姻を継続し難い重大な事由に該当するとされ、離婚と慰謝料120万円が認定された事例(平成5年3月18日福岡高裁判決)
事実関係
- 夫は”付き合いだ”と言って好き勝手に出歩いていた。
- 生活費にも事欠く状態なのに、夫は妻と話し合いの機会を持たなかった。
- 夫も多忙だったとはいえ、家庭を顧みて妻の不満を解消する努力が十分でなかった。
- 性交渉は入籍後約5か月内に2、3回程度と極端に少なかった。
- 性交渉がない中、夫自身はポルノビデオを見て自慰行為をしていた。
- 「性生活に関する夫の態度は異常だ」と指摘する妻に対して、夫は一旦は改善を約しながら依然として改めていない。
- 妻は夫への愛情を喪失し、婚姻生活を継続する意思が全くない。
裁判所の判決
婚姻生活は、夫が自営業で収入に不安定な面があるため、当初からその生計に不安定要因を抱えていた。妻はこれを納得しながらも、他方では夫が妻と話しあって十分な説明をしないまま生活費に事欠く状態であるのに付き合いだと言って出歩くことから夫の態度に思いやりのなさを感じたものである。
夫も多忙とはいえ、家庭を顧みて妻の不満を解消する努力は不十分である。また、性交渉は入籍後約5か月内に2、3回程度と極端に少なく、平成2年2月以降は全く性交渉がない状態なのに、夫はポルノビデオを見て自慰行為をしている。
性生活に関する夫の態度は、正常な夫婦の性生活からすると異常というほかはなく、これらの点を指摘する妻に対して、夫は、一旦は改善を約束しながら依然として改めていない。
これによって妻は夫への愛情を喪失し、婚姻生活を継続する意思が全くないこと等の事情からすると、夫と妻との婚姻生活は既に破綻しているものといわざるを得ず、妻と夫との間には『婚姻を継続し難い重大な事由』があると認めるのが相当である。