病的な性的嫌悪感に関する事例(慰謝料150万)
要旨
事実関係
裁判所の判決
原告・被告花子間の婚姻は、被告花子のいわれなき性交渉拒否、暴言、暴力、同居・協力の拒否等により破綻させられたというのである。
夏子(被告花子の親戚)は、被告花子と前夫との結婚生活が被告花子が性交渉を拒絶するために喧嘩の絶えないものであったこと、そのため、被告花子の方が金100万円を前夫に支払い離婚したことなどを被告花子から聞いており、また、「異性に身体を触られると気持ちが悪い。」などということを被告花子から聞かされているというのである。
更に、夏子は、昭和62年10月下旬ころ、被告花子が電話してきて話すうちに、その夫婦生活の実態を知るに至った。そして、被告花子には性交渉は夫婦生活にはなくてはならないものだから応ずるようにと説得した。
その後、何度か花子とは電話で話したが、進展が見られないので、昭和六三年一月下旬ころ、自分の判断で被告花子を産婦人科へ連れて行き、診察してもらったところ、身体には異常はないが、年齢の割に精神面に幼児的なところがあると医師から言われたというのである。
しかして、夏子は花子とは格別に仲の良い父方の親戚であることが認められるのであって、その夏子が殊更虚偽の陳述書を作成することは到底考えられず、右内容は真実であると認めるべきものである。
一方花子は、婚姻生活の実態について、原告・被告花子間の婚姻は前妻のことを何時までも言うなどの原告の異常な言動等により破綻したものであり、原告・被告花子間には性交渉も若干はあったというのである。
しかしながら、これら証拠はいずれも、夏子との交渉について、前記真実と認めるべき事柄とは全然相違する趣旨のことが述べられているなど、容易く措信できるものではないのである。
こうしてみると、前記原告の陳述書や供述は、真実と認めるべき夏子の陳述書とも符合して矛盾がみられないものであるし、夏子の陳述書のとおり被告花子が男性との性交渉に耐えられない女性であるとの前提で検討すると、全般的にむしろ自然なあり得べき内容のものとして充分信用に値すると考えられる。 すなわち、婚姻生活の実態は、前記原告の主張のとおりの状況であったものと認めるべきである。
婚姻は、結局被告花子の男性との性交渉に耐えられない性質から来る原告との性交渉拒否により両者の融和を欠いて破綻するに至ったものと認められるが、そもそも婚姻は一般には子孫の育成を重要な目的としてなされるものであること常識であって、夫婦間の性交渉もその意味では通常伴うべき婚姻の営みであり、当事者がこれに期待する感情を抱くのも極当たり前の自然の発露である。
花子は原告と結婚していながら性交渉を全然拒否し続け、前記のような言動・行動に及ぶなどして婚姻を破綻させたのであるから、原告に対し、不法行為責任に基づき、精神的苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。
原告に認められるべき慰謝料額は、本件にあらわれた一切の事情を総合勘案し、金150万円が相当である。
コメント
この判例は性交渉の拒否に有責性を認めたものですが「病的な性的嫌悪感や体質的な性的不能など、本人に帰責事由がないと考えられる場合にまで慰謝料が認められるはおかしい」という批判があります。